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10/26/2011

司会者の矛盾

自転車を漕ぎながらこんなことを考えていた。

仕事柄、様々な会合の現場を見て来ました。
政党の定期大会、学会、社内会議、説明会、
創立記念式典、定期総会、懇親パーティー。
内容は様々ではありますが必ず存在するのが司会者です。
婚礼や格式の高いパーティーであればプロの司会者が登場しますが
そうでなければ大抵は社内の誰かがあるいはその会のメンバーの誰かが
司会の役を仰せつかり、慣れた感じで、あるいは全く不慣れな感じで
進行役をこなして行きます。
その中で、いつも『何だかな』と思うことがあります。

別に進行の上手い下手をどうこう言うつもりは全くありません。
僕がふと疑問に思ったのはそう云う事ではありません。
例えばある会社の創立何周年だかの記念式典。
司会を務めるのは総務部の誰々さんなわけなんですが、
僕がいつも思うのはその司会者の自己紹介の場面です。

『お時間になりましたので・・・を始めさせて頂きます。
本日は足下の悪い中、またお忙しい中を・・・・・』
そんな感じで会はスタートして行くわけですが、
多くの場合、この始まりの口上の一番最後に司会者が、
『申し遅れましたが、本日の司会は・・・部の〜が勤めさせて頂きます。
なにぶん不慣れなものでございますがどうぞ宜しくお願い致します』
とかなんとか、まあ大体そんなようなことを言ってぺこりと頭を下げるわけです。

ここで彼は『申し遅れましたが』と言っていますが、
別に言うのを忘れていたわけではないでしょう。
最初っから『申し遅れる』つもりで用意しているに決まっています。
これは謙った、謙虚な姿勢の現れなんだと思います。
確かにいきなり第一声が司会者の自己紹介では何だかなと、それは確かです。
司会者と云うものはあくまで黒子であって、決して主役ではない。
演台に立つ事もなければ(司会者の前にある台は
あれはあくまで『司会台』であって講演者の前にある演台とは違う)
ステージに上がる事もない(掛け合いをするために上がる事もないわけではないが)。
一応表に顔を出してはいるが、裏方の一人であって、
粛々と会を進めて行くのが仕事ですから。

だから彼が謙遜して最後に付け足しのように名乗る事は
それ自体は特に問題だとは思いません。
なのに何故か僕はここに問題を感じてしまう。
それは何故か。
さっきのストーリーの続きを想像してみよう。
会の最初に司会者が諸々の説明なり注意なりを行い、
これからいよいよ予定のプログラムが始まろうかと云うその直前に
『なお、申し遅れましたが・・・』と来る。
で、その後何が起きるか。
多くの場合、ここで会場いっぱいの拍手が沸くのである。
これは会の始まりを景気付けている面も多いけれども
どうも司会者に対して拍手が向けられている場合も多いように感じる。
『さあ、それではスタートです!』の直後の拍手なら
素直に会の始まりを祝う拍手だが、
『本日の司会は・・・部の〜が勤めさせて頂きます。宜しくお願い致します』
の直後の拍手ではやはり司会者に向けられている空気の方が濃い。

いや、別に、司会者頑張れよと、それは良いんですよ。
でもね、折角『謙って』、『謙虚に』自己紹介したのにさ、
割れんばかりの拍手を受けるってぇのはどうなんでしょうね。
もろ主役じゃないですかその瞬間は。
まあその瞬間ぐらいは良いじゃないかとおっしゃるかも知れませんが
徹底的に謙るのであればこんな拍手を受けるわけにはいかないはずです。

形式上はもの凄く謙っているのに、
会場いっぱいの拍手を受けてしまう。

これはもの凄い矛盾だなといつも感じます。
だってそこで区切ったら拍手来ちゃうでしょう、と。
目立っちゃいかんのやなかったんですかい?
大した事ではないんだろうけれどもちょっと不思議です。

そう、もちろん自己紹介をしなけりゃ良いんですが
まあ、場合によっては名乗らざるを得ないんでしょうか。
いやでも本当にそうか?
別に会場の人たちは司会が誰かなんて
どうでも良いんじゃないのか?
別に名乗らなくたって
『礼儀がなっとらん!』とか言いはしないよ。
例えば婚礼。
ある程度格式のある場だけど、司会者は名乗りはしないよ。
もちろん新郎新婦とは何回も打ち合わせしてるだろうし、
当日も両親には挨拶してるけどね。
でも披露宴の最初に司会者が自分の名前を名乗る事はない。
席次表を見たって司会者の名前なんか書いてない。
だからと言って出席者は別に不満な様子もないし、
それで良いんじゃないか。

まあ、それでも司会者が名乗らなければいけないとしよう。
しかしそれが最後になってしまったら拍手を受ける事になってしまう。
いや、厳密に言えば、最後でなくとも名乗った後に区切りがあると
そこで拍手が沸いてしまう。
上手い事拍手が沸かないような自己紹介は出来ないのだろうか。
いや、普通にちょっと考えれば出来そうなんだよね。
具体的に言えば、自己紹介で名前を言った後もしゃべり続ければ良い。
話が自然に続いている限り、誰もそれを破って拍手したりはしない。
『・・・が勤めさせて頂きます。どうぞ宜しくお願い致します』
で切ってはいけない。ここで切ったら拍手が来る。
かと言ってやたら急いだ感じで次につないでも変な感じがするから
ここは頭をひねって考えなければいけない。
具体的な文面をどうするかは考えどころですが必ず出来るでしょう。
で、会の始まりを告げて言葉を切る。
会場拍手。

これが理想の展開だな。

全然自転車の話じゃないな。
まあ、いいか。
いい天気だ。
朝はちょっと寒いくらいですが
昼間は本当に良い気候です。
最近毎回北周りで帰って来ます。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

私は、会社の祝賀会やら創立記念行事や、演奏会等での司会者を70回程務めてきましたが、一度も、名乗ったことがありません。理由は単純。拍手されたくないからです。自分は決してプロではないし、演奏会において私は主役でもない。主役は演奏家達だと思うからでした。他の司会者さんが名乗るのは気になりません。ただ自分が名乗るのは嫌なだけです。
明後日、とある団体の演奏会で司会者をしますが、原稿に書かれている司会者紹介は勝手にカットしました。しかしよく言われる、なぜ名乗らなかったんだと言われたときにどう言い訳しようかなと思っていたら、ここにたどり着きました。
共感するところがあったので、ちょっと嬉しくてコメントさせて頂きました。

Shermy さんのコメント...

申し訳ありません。
コメントを頂いていることすら今の今まで知りませんでした。
もうここをご覧になることはないかも知れませんが、
もしまた何かのご縁があってお目にかかりましたら
その節はよろしくお願い致します。

同じようなことを考えていらっしゃり、
しかも一度も名乗らずにとは、感服致します。

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